非常勤役員でも社会保険加入が必要?
KOYAMA社会保険労務士法人 仙台事務所の村山です
会社の役員として名前を連ね、毎月一定額の役員報酬を受け取っている。 ただし、出社は月に数回程度で、社内では「非常勤役員」という位置づけにしている。こうした形は、実務の現場では決して珍しいものではありません。
そして多くの場合、「非常勤役員だから社会保険は対象外」という整理が、特に疑問を持たれることなく続けられています。
そもそも、「非常勤役員」という言葉自体、社会保険の法律上、明確に定義されたものではありません。 健康保険法や厚生年金保険法を見ても、「非常勤であれば加入不要」といった規定はなく、肩書や社内での呼び方だけで社会保険の要否が決まるわけではありません。 実務では常に、「どのような立場か」ではなく、「どのような実態か」が見られます。
代表取締役については、勤務日数の多少にかかわらず、原則として社会保険の被保険者となります。代表取締役は、会社を代表し、最終的な意思決定権限を有する立場にあります。たとえ月に数回しか出社していなかったとしても、あるいは実務にほとんど関与していないように見えたとしても、代表権という強い権限の実態がある以上、「非常勤だから対象外」と整理することはできません。
実務上も、代表取締役について社会保険未加入とする扱いは、原則として認められていません。
一方で、代表取締役以外の役員については、個別の実態判断が問題になります。例えば、その役員報酬がどのように支払われているか、 毎月、定期的に、定額で支給されていないでしょうか。
欠勤があっても減額されず、役員報酬として安定的に支払われている場合、それは単なる臨時の謝礼ではなく、継続的な職務の対価と評価されやすくなります。
出社日数が少ないという点だけで、安心することもできません。 月に数回しか出社していなくても、定例会議に参加していたり、重要な意思決定に関与していたり、現場や管理業務に継続的に関わっているのであれば、会社運営に常時関与している役員と見られる可能性があります。
実際、出社頻度の多寡よりも、関与の継続性や役割の重さが重視される場面は少なくありません。
また、「本業は別にあるから、この会社では非常勤」という整理も、社会保険の世界では必ずしも通用しません。
社会保険には、所得税のような「主たる勤務先」「副業先」という明確な区分はなく、他社で社会保険に加入しているからといって、この会社での取扱いが軽くなるわけではありません。
条件を満たせば、「二以上事業所勤務者」として整理すべき問題が生じることもあります。
役員報酬の金額が少額である場合も同様です。 「これくらいの金額なら問題ないだろう」という感覚で判断されがちですが、実務では金額の大小よりも、定期性や継続性、業務関与の実態が見られます。
少額であっても、毎月安定して支給され、役員としての役割を果たしているのであれば、社会保険の対象と判断される余地は十分にあります。
こうした点を踏まえると、「非常勤役員だから社会保険はいらない」「登記上そうなっているから問題ない」「昔からこの扱いでやっている」といった整理が、必ずしも根拠のあるものとは言えないことが分かります。
社会保険は、呼び方や慣習ではなく、第三者に説明できる実態があるかどうかで判断される制度です。
非常勤役員がいる会社ほど、一度立ち止まって整理しておきたいところです。役員報酬はどのような性格のものなのか。どの程度、会社運営に関与しているのか。 その一つひとつを、外部から問われたときに説明できる状態になっているかが重要です。
最後に、実務上見落とされがちな点があります。
年金事務所などの調査が入った場合、社会保険の未加入や誤った取扱いが判明すると、過去にさかのぼって保険料の納付を求められることがあります。
しかも、その負担は、短期間では済まず、数年分まとめて請求されるケースも珍しくありません。
「非常勤だから大丈夫だと思っていた」その判断一つで、思わぬ金額の追加負担が発生することもあります。問題が指摘されてから慌てて対応するよりも、何も起きていない今のうちに整理しておく方が、結果的に会社の負担は小さく済みます。
対応にお困りの際は、ぜひKOYAMA社会保険労務士法人へご相談ください。
