社会保険労務士が果たせる「地域社会の福祉の向上」とは ― 私的体験を踏まえた提言 ―

KOYAMA社会保険労務士法人東京事務所の小山です。

 

以前のブログで、「地域社会の福祉の向上を支える社会保険労務士の役割と展望」のテーマで、私の所感を記したことがありました。その時にも書きましたが、私たち社会保険労務士は、主として、労務管理や社会保険制度に精通する専門家として企業を支援することが多いのですが、少子高齢化が進み、地域での支え合いが希薄化するなかで、私たち社労士に求められる役割は、企業の枠を超えて「地域社会の福祉の向上」へと広がりつつあると私は考えています。

 

実は私自身、家族がある疾患により、障害年金を受給するに至った経験から、障害を抱える本人だけでなく家族や親族までもが背負う負担の大きさを痛感しています。これは、障害という側面だけではなく、高齢化社会が進む中、家族の介護に携わることで苦労を抱える方も同様かと思います。ある報告によると、家族が主要な介護者となっている人は全国で約653万人、「国民の20人に1人」と言われていますが、多くの家庭が同じような苦悩を抱えているのが現実であると考えています。

 

しかし、相談先は病院、支援施設、学校、自治体など多岐にわたるものの、各機関の連携は必ずしも十分とは言えません。結果として、家族は複雑な制度や支援の仕組みの狭間で、自ら解決策を模索せざるを得ない状況に置かれているのが、現状ではないでしょうか。

 

政府が主導する「地域共生社会の在り方検討会議」でも、社会的孤立の進行や縦割り構造の課題が指摘され、包括的で柔軟な支援体制の必要性が示されています。しかし、「言うは易く行うは難し」。理念を実現するにはまだ、大きな隔たりがあると言えるでしょう。

 

そこで私が提言したいのは、地域における複数の支援領域を「横断的につなぐ役割」を社会保険労務士が担うべきではないかということです。 介護・医療・子育て・生活支援・就労支援―これらが縦割りであるからこそ、支援の利用者は行き場を失い、支援の「つなぎ目」で苦しむことになる。私たち社労士は、制度・労働・社会保障に横断的に関わる専門性を持つと自負しています。企業支援で培った知識やネットワークを地域にも拡張し、多様な支援機関を結びつける「ハブ」となることで、地域の福祉向上に寄与できるはずだと確信をしています。その具体的な形の一つとして、社会保険労務士が担う「成年後見人」としての活動が挙げられると考えています。

 

複雑な制度に迷う家族が、適切な支援に確実につながるように―。 社会保険労務士が、地域を横断的に結ぶ「つなぎ役」として活躍する未来を、私は強く期待し、具体的な行動を始めようと思うこの頃です。