治療と仕事の両立について
KOYAMA社会保険労務士法人 仙台事務所の壽見です。
現在の日本で、「がん」は最も死亡率の高い病気であり、万が一ではなく二人に一人はがんになる時代といわれています。男性は4人に1人、女性は6人に1人が、がんで亡くなっています。一方で、がん罹患者の5年生存率は約60%というデータもあります。医療の発達や早期に発見、治療することで生存率は着実に向上しています。
がんと診断を受けて退職・廃業した人は就労者の約20%、そのうち初回治療までに退職・廃業した人は約60%となっており、診断時から治療と仕事の両立について、気軽に相談できる体制づくりが求められているのではないでしょうか。
事業主の安全配慮義務において、労働者が疾病を抱えながら就労を希望する場合には、その生命・身体の安全を確保しつつ就労できる環境を整える責任があります。事業主が平時から行うべきことは、両立支援に関する方針の明確化と制度整備です。具体的には、休職制度、短時間勤務制度、時差出勤、在宅勤務制度、時間単位年休など、治療と両立しやすい柔軟な働き方を就業規則に整備しておくことが重要です。また、相談窓口を明確にし、担当者を定め、個人情報の適切な管理体制を構築しておく必要があります。産業医との連携体制もあらかじめ確保しておくことが望まれます。
実際に労働者から申し出があった場合には、まず本人の意思を尊重しながら状況を把握します。病名の開示を強制することはできませんが、就業配慮の判断に必要な範囲で、主治医の意見書等により就業可能な業務内容や労働時間の制限などを確認します。その上で、産業医の意見も踏まえ、職場においてどのような配慮が可能かを検討します。
就業上の措置としては、労働時間の短縮、残業免除、業務内容の軽減、配置転換、在宅勤務の活用、通院時間の確保などが考えられます。重要なのは、本人の希望のみで判断するのではなく、医学的妥当性と事業運営上の合理性を踏まえ個別判断を行うことです。配慮内容については期間を区切りながら、定期的に見直すことが実務上適切です。
治療と仕事の両立支援において大切なのは、「治癒してから復帰」という発想ではなく、「安全に就労できる範囲で継続する」ということであると思います。
