地域社会の福祉の向上を支える社会保険労務士の役割と展望 私の所感 ③ ― 子ども・子育て支援における貢献 ―
KOYAMA社会保険労務士法人 東京事務所の小山です。
少子化や働き方の多様化が進む現代において、「子ども・子育て支援」は地域社会の持続的な発展にとって重要な課題となっていることを、地域に居住する住民の一人として実感します。こうした中、社会保険労務士は、労働・社会保障制度に関する専門知識を活かして、地域における「子育て支援体制の強化」に大きく寄与することができるものと考えます。以下では、地域社会における「子ども・子育て支援」に関連する社会保険労務士の具体的な役割と、今後の展望についてコメントします。
私たち社会保険労務士は、日々、顧問先企業における育児休業制度や短時間勤務制度、看護休暇制度など、子育てと仕事の両立を支える仕組みの構築や運用を支援しています。特に中小企業においては、制度の導入や運用に不安を抱えるケースが多く見受けられ、これに対して、法令に準じたアドバイスを行っています。具体的には、育児に係る規程を整え、規程に準じた育児休業の取得や、短時間勤務の運用などを支援します。特に最近では、男性の育児休業が増えており、それに対して、法令改正に準じて制度を整え、男女の差異なく、公平に法と制度に則った運用を支援することも多くなっています。いずれにしても、顧問先企業がコンプライアンスを維持しながら、従業員のワーク・ライフ・バランスを支援できるよう、体制整備と運用をバックアップすることを通じて、企業における「子ども・子育て支援」に尽力するケースは拡がっていると言えるでしょう。
では、地域住民との関わりの中で、「子ども・子育て支援」に関わるケースはあるのでしょうか。残念ながら、社労士のビジネスとしての場面で、地域社会との関わりを通じて支援するケースは、稀な例と言えるでしょう。しかしながら、地域住民の中には、育児休業給付や児童手当、社会保険制度の仕組みを十分に理解していない人も多く存在するのは事実です。社会保険労務士は、雇用・社会保障に関する相談窓口の担い手として、地域に住む個人に対する情報提供や手続き支援を行うことで、子育て世代へ各種の制度活用の促進を図ることができるものと考えます。
具体的には、自治体と連携し、子育て支援に係る各種の制度活用の相談窓口としての機能や、企業に勤めながら、育児に取り組む従業員と、自治体との橋渡しを担うことなどが挙げられるでしょう。とりわけ、ひとり親家庭や非正規労働者など、制度の周知や活用が進みにくい層への支援は、社会的包摂の観点からも重要な意義を持つものと思っています。さらに近年社会問題となっているネグレクトや児童虐待など、地域社会では埋もれがちな問題とも関わり、未然に防止するための制度づくりを社会保障制度の枠組みの一つとして提言してゆくことが求められるものと個人としては考えます。
今回は、「地域社会の福祉の向上を支える社労士の役割と展望 私の所感」の3回目として、「子ども・子育て支援における貢献」をテーマにコメントしました。今後、自治体や他士業、地域団体、企業との連携を強化しながら、「働く親を孤立させない地域づくり」の一翼を担うことが、社会保険労務士の重要な役割となると言えるでしょう。社会的信頼を背景に、福祉と就労をつなぐ専門職として、さらなる活躍の場が期待されるものと考える昨今です。