囚人のジレンマで考える外国人社員寮の水道光熱費の問題
SolveHRの玉造です。
技能実習生や特定技能外国人を複数名受け入れている企業では、コストや生活支援のしやすさから、一軒家やアパートを借り上げて社員寮とし、共同生活をしてもらうケースが多く見られます。共同生活は、通勤・生活の安定という面でメリットがある一方、運用の難しさも出ます。
その中でも“よく問題になる”のが、水道光熱費(電気・ガス・水道)の負担をどうするかというテーマです。
・エアコンの使い方(つけっぱなし/設定温度)
・シャワー時間や給湯の使い方
・共用部の照明や家電の使い方
・「節約している人」と「気にしていない人」の不公平感
注意すると人間関係がこじれやすく、放置すると不満が溜まる。 結果として、職場の定着や生活の満足度にも影響することがあります。
こうした問題は、個人の性格や価値観だけで説明すると対策が難しくなります。そこで今回は、ゲーム理論の有名モデルである 囚人のジレンマ を使って整理してみます。
囚人のジレンマは、簡単に言うと「全員が協力すれば良い結果になるのに、各自が合理的に動くと協力しない結果になりやすい」という“仕組み上の罠”です。
囚人のジレンマ(Prisoner’s Dilemma)は、2人の容疑者AとBが別々に取り調べを受ける話で説明されます。
2人はそれぞれ、次の選択を迫られます。
・黙秘(協力)する
・自白(裏切り)する
典型的な結果はこうです(刑の重さは例)
・両方黙秘(協力・協力)→1年(軽い)2人とも軽い刑
・片方だけ自白(裏切り・協力)→自白した方 0年、黙秘した方 3年(黙秘側が損)
・両方自白(裏切り・裏切り)→2人とも 2年(中くらい)
このとき重要なのは、Aの立場で考えると
Bが黙秘でも → Aは自白した方が得
Bが自白でも → Aは自白した方が得
つまり、相手がどうしても自分は「裏切り」を選ぶのが合理的になってしまう点です。Bも同じ判断をするため、結果として 両方が自白(裏切り・裏切り) に落ち着きやすい。しかし全体として見れば、本当は 両方黙秘(協力・協力) の方が2人にとって良い結果です。ここが囚人のジレンマの核心です。個人にとって合理的な行動が、全体としては望ましくない結果を生む。共同生活のルールづくりは、まさにこの罠にハマりやすい分野です。
水道光熱費の問題も、その典型例として整理できます。社員寮の水道光熱費を、囚人のジレンマの形に置き換えてみます。
寮の住人(Aさん・Bさん)がそれぞれ選べる行動はシンプルです。
・節約する(協力):こまめに消灯、エアコンの調整、シャワーを短めに、など
・節約しない(非協力):気にせず快適さ優先
ここで多くの寮が採用しているのが、
・家賃込みの定額
・居住人数で割り勘
・会社負担(実質的に上限が見えない)
といった「個人の使用量が見えにくい」負担方式です。
この条件だと、住人の心理はこう動きます。
1自分が節約しても、支払いがあまり変わらない
割り勘・定額では、頑張って節約しても自分の負担が大きく下がりにくい。
2 もし相手が節約しなかったら、自分だけ損をする
自分だけ我慢しても、相手がエアコンつけっぱなし・シャワー長めなら、請求額は結局高いまま。快適さだけ失って、納得感がなくなります。
3 だから「自分も気にしない方が損しない」
すると合理的にはこうなります。「自分だけ節約して損したくない。だから自分も普通に使う。」結果として、全員が節約しない方向へずれていき、光熱費が高くなりやすい。
これが社員寮で起きている“囚人のジレンマ”です。つまりこれは「誰かの性格が悪い」ではなく、協力が報われにくい仕組みが生み出す現象だ、と整理できます。
解決策として囚人のジレンマは、気合いや説教では解けません。解決のコツは一つです。「協力(節約)が得になる設計に変える」こと.。実務で効きやすい方法を紹介します。
・ 見える化:まず“何が起きているか”を共有する
毎月の請求額を掲示(前月比・1人当たり)※「誰が使ったか」を犯人探しにしないのがポイントです。総量が見えるだけで、行動が変わるケースは多いです。
・ルールの明文化:揉める前に“線引き”を作る
エアコン:不在時OFF、推奨温度目安、シャワー:目安時間(強制でなく指針として)
共用部:照明・換気・家電の使い方、大幅超過時追加徴収 or 会社補助上限の明確化
・節約を“我慢”から“メリット”に変える
例:基準額を決めて下回った分を還元する
上回った分は追加徴収(または会社負担上限を超えた分は住人負担)
節約=損だと続きません。節約=生活が良くなるに変えると、協力が自然に増えます。
SolveHR株式会社も一緒に解決に取り組みます
外国人社員寮の運用は、単なる生活管理ではなく、定着・就労の安定・トラブル予防に直結する重要テーマです。
弊社 でも、
・寮ルールの整備、説明
・入居時オリエンテーション
・トラブル時の第三者調整
・運用の見える化(掲示物・フォーマット)
などを通じて、企業様と一緒に問題解決に取り組んでまいります。
「最近ちょっと揉め始めている」「今の運用が曖昧かも」という段階でも、お気軽にご相談ください。
