労災申請のデメリット?
KOYAMA社会保険労務士法人 東京事務所の菊馬です。
従業員が業務上の事由または通勤が原因でケガや病気になり、労働災害として申請する際に、労災保険上の会社に対するデメリットについて質問されることがあります。基本的に労災保険は毎年、従業員の給与を基準に会社が全額負担で納付しているため、追加で費用が発生することはありません。私傷病が原因でない限り、労災として申請する義務があり、労災かくしは50万円以下の罰金になるので、申請しないというわけにはいきません。なので、労災申請は手続きが煩雑になるくらいですとお伝えすることが多いです。
ですが、一定規模以上の事業に適用される「労災保険のメリット制」があると話は別です。
日本医師会労災・自賠責委員会答申(2016年2月)では『事業者による「労災かくし」を助長し、一向に排除とならない原因の一つとしてメリット制が挙げられる。労災保険における保険料は、業種別(事業の種類)によって災害発生頻度に差があることから事業主間の保険料負担の公平を期すため災害率等に応じて保険料が定められている。事業主が災害防止努力をして、労災事故を減少させることで労災保険料は最大40%の範囲で減額されるが、事故が多いと最大40%の範囲で増額となる制度である。本来は災害防止努力を促すためのメリット制が、労働災害が発生すると保険料負担が増えるという認識を事業主が持つこととなり、その結果労働災害をかくすという行動につながっていると考えられる。』 として問題視しており、令和5年6月15日に衆議院で提出された「労災保険のメリット制に関する質問主意書」にも挙げられています。
このメリット制については労災申請における明確なデメリットに当たると思われるため、事業主には念のため説明するようにしていますが、労災かくしは犯罪ですので、速やかに申請出来るように努めていきましょう。