残業時間の自己申告制は問題ない?
KOYAMA社会保険労務士法人仙台事務所、松田です。
時間外労働や休日労働を、労働者の申告制にすること自体は問題ありません。
ただし、自己申告のみの記録によって管理する場合は、実際の労働と申告の時間の乖離がないか注意が必要です。
労働者が申告しなかったとしても、実際に働いた時間は労働時間となるため、自己申告の時間と実労働時間の乖離が大きければ大きいほど、未払い賃金のリスクが膨らむことになります。
また、労働時間管理は使用者の義務であり、原則は「使用者が自ら現認することにより確認」若しくは「タイムカードやICカード等の客観的な記録を基礎として確認」することが求められています。
以前、労働基準監督署調査の対応業務にて「退社打刻と自己申告の残業時間が大きく乖離、または退社打刻と実労働時間に相違が認められ、理由が証明できない場合は、パソコンのシャットダウンのログ、あるいは退社後の会社のセキュリティーの記録をもとに実労働時間として割増賃金の再計算を」といった指摘を受けた経験があります。
よって、自己申告制を適正に運用する場合は、客観的な記録も併用し、両者の差異を検証する仕組みを構築することが望ましいです。
例えば、残業申請がないにもかかわらず退勤時刻が遅い日について、その理由(「交通機関遅延につき会社内にて待機」「資格取得の自主勉強」など)を、出勤簿の備考欄や余白に記録をすることなどが考えられますね。