割増賃金はそもそも何のためにあるのか

KOYAMA社会保険労務士法人 東京事務所の菊馬です。

 

割増賃金というと「残業した分のご褒美」や「頑張った対価」というイメージを持たれがちですが、制度の本来の目的はそこにはありません。労働基準法における割増賃金制度は、長時間労働を前提とするものではなく、むしろそれを抑制するための仕組みとして設けられています。法定労働時間を超える労働は本来例外であり、やむを得ず時間外や休日、深夜に労働させる場合には、通常よりも高い賃金を支払わせることで、企業にとって「割に合わない選択」にするという考え方です。

 

ところが実際には、割増賃金を支払っているから問題ない、残業代さえ払えば長時間労働も認められる、といった認識が広がっているのが実態です。制度上は抑止のために設けられた仕組みが、結果として長時間労働を前提とした運用を正当化する材料として使われてしまっているとも言えるでしょう。本来は長時間労働を避けるための制度であるという前提を改めて意識し、労働時間そのもののあり方を見直していかない限り、現行制度のもとで長時間労働の是正を進めていくことは、当分の間、難しいのではないかと思ったりもします。