企業における障害者雇用は道半ば

KOYAMA社会保険労務士法人 東京事務所の小山です。

別の職員のブログで、令和7年度の障害者雇用納付金制度申請についてのコメントがありました。納付金申請の時期と相俟って、高年齢者および障害者の雇用状況報告も控えています。私たち社会保険労務士は、この時期、納付金・調整金の申請や、報告に時間を費やすことが多くなりますが、各顧問先企業における障害者雇用の推進にも、少なからず尽力することがあります。近年、我が国において、障害者雇用の促進が進められていますが、依然として多くの課題が残っており、現状は、「道半ば」と言わざるをえない状況です。法定雇用率の引き上げや合理的配慮の義務化などの施策が実施されているものの、実態としては形骸化や名目上の雇用にとどまるケースもあります。社会保険労務士の立場から、私なりに現在の障害者雇用の現状や課題を整理してみました。

 

  1. 障害者雇用の現状


企業は障害者雇用促進法に基づき、一定の割合で障害者を雇用することが義務付けられています。2024年4月には法定雇用率が2.5%に引き上げられ、さらに2026年には2.7%へと拡大される予定です。しかし、厚生労働省の調査によると、特に中小企業では法定雇用率を満たせていない企業が多く、未達成企業には、障害者雇用納付金の納入や、企業名の公表が科されることがあります。

 

  1. 課題と問題点

 

(1) 雇用の質の問題
単に雇用率を達成するために、補助的な業務に限定した形で障害者を採用する企業も少なくありません。本来は多様な職種やキャリア形成の機会を提供するべきですが、現実には限定的な雇用にとどまっている場合が多いと言えるでしょう。

 

(2) 職場環境の整備不足
昨年、障害者差別解消法が改正・施行され、合理的配慮の提供が義務化されているものの、バリアフリー設備の不備や、適切な業務配分がなされていない職場も多く存在するのが現状です。また、職場の理解が不十分なため、障害者が孤立してしまうケースがあることも聞き及びます。

 

(3) 企業側の理解不足
障害者雇用を進めるにあたって、企業側の理解やノウハウが不足していることも課題と言えます。特に精神障害や発達障害に対する理解が進んでおらず、適切なサポート体制を整えることが難しい企業も多いのが現状かと考えます。

 

  1. 今後の展望として

 

障害者雇用の真の意味での充実を図るためには、単なる数値目標の達成ではなく、質の向上が求められるのではないでしょうか。具体的には、一例ではありますが、以下のような取り組みが必要と考えます。

 

職場環境の整備:バリアフリーの推進や、障害の特性に応じた柔軟な働き方の導入

教育と啓発の強化:企業の管理職や従業員への研修を通じ、障害者への理解を深める

多様な雇用機会の提供:障害者が単なる補助業務にとどまらず、適性に応じたキャリア形成ができるような仕組みの構築 など

 

本来、企業における障害者雇用は、数値上の達成だけではなく、働く側にとっても真に意義のあるものにしていく必要があると言えるでしょう。現状はまだ「道半ば」ではありますが、社会全体での意識改革と具体的な取り組みを進めることで、より持続可能な雇用環境を築いていくことが求められます。しかしながら、「言うは易く行うは難し」。まずは、できることから、一つ一つ、積み重ねていくことが、現在の取り組みと言えるでしょう