精神障害者の雇用について、法定雇用率達成を踏まえた私の所感

KOYAMA社会保険労務士法人東京事務所の小山です。

 

前回のブログでは、「精神障害と障害年金について」のテーマでコメントしました。

今回は、社会的にも関心の高い課題の一つでもあり、私が社会保険労務士としても関わっているこのテーマについて、現場で感じたリアルな実感も踏まえてコメントします。

精神障害者の雇用促進は、社会的包摂の観点から極めて重要な課題となっています。特に、2018年に精神障害者が法定雇用率の対象に加わって以降、企業には積極的な対応が求められています。しかし、精神障害者の雇用を含めて、法定雇用率を達成するためには、単に数を確保するだけでなく、職場環境の整備や社内理解、合理的配慮が不可欠と言えるでしょう。

過日の新聞記事で、精神の障害を持つ人を企業が雇用しやすくなるよう支援するサービスが広がっていることを目にしました。例えば。。。。

ある大手不動産会社と就労困難者支援某企業のコラボで、「デジタルイノベーションセンター丸の内(DIC丸の内)」を東京・大手町に開設したとのこと。デジタル業務に特化する就労支援事業所で、うつ病などの精神障害を持つ20〜40代の人たちが雇用契約を結んで、働きながら技能を身に付けている事例が取り上げられていました。精神障害を抱える人のなかには、対人関係やコミュニケーションが苦手な人もいるため、相手のペースに合わせたり、順序立てて丁寧に説明したりするなどの配慮が求められるとのこと。DIC丸の内では、利用者の業務の進捗を管理したり、体調面を気にかけたりする複数の職員を配置して、顧客企業から受託した業務を行っているようです。雇用契約を結んだ人の中には、ITスキルを持つ人もいて、データ入力などの単純作業だけでなく、AIを活用して作業の一部を自動化するなど高度な業務を担うこともあるようです。

こうした就労支援の現場では、書類整理などのアナログな事務作業を請け負う事業所が多いのが現状のようですが、システム開発まで担う事例は珍しいと言われているようです。

私自身が、精神障害者に係る雇用の現場に立ち会った事例もあります。採用には至ったものの、継続雇用に至るまでの過程は、困難さを伴うことも事実です。しかし、新聞記事にもあった通り、相手のペースに合わせたり、丁寧に説明したりするなど、相手への配慮をしながら、根気強くフォローをしてゆくことで、継続的に雇用することへの道筋が得られることを実感しました。

精神障害者の雇用は、入口の採用だけではなく、長く安心して働けるよう、職場内の理解促進や柔軟な勤務制度、相談体制の整備が、今後一層求められるでしょう。

今や企業にとっては、障害者の法定雇用率の達成は「義務」ではなく「価値」へと昇華される時代と言えます。つまり、単に法定雇用率を満たすためではなく、多様な人材を活かす企業価値向上の一環として、障害者雇用を捉える姿勢が求められると言えるでしょう。

しかしながら、トランスジェンダー、外国人労働者、そして、精神障害を含めた障害者の雇用など、多様性を尊重しつつ、共生社会の実現に向けての企業の課題は多く、困難を極めると言えます。

私たち社会保険労務士の使命の一つとして、共生社会の実現に向けた企業の実践例や成功事例を積極的に共有しつつ、多様性を尊重する職場づくりを推進することを、お客様とともに目指していきたいと考える昨今です。