最低賃金引上げの背景と助成金活用

KOYAMA社会保険労務士法人 東京事務所の小山です。

7/25の中央最低賃金審議会にて、令和6年度の地域別最低賃金について、全国平均で50円引き上げ、時給1054円にする目安額が答申されました。引き上げ額は4年連続で過去最大となっています。4年連続過去最大の引き上げには、何が背景となっているのでしょうか。

今日の日本社会では、人口減、少子高齢化に伴う経済の構造変化を反映して、人材の獲得競争に拍車がかかっている状況があります。且つ、この30年来にわたり、デフレスパイラルからの脱却が図れていない事態から、欧米諸国をはじめとする先進国との賃金差に溝を上げられ続けてきました。

そのため、我が国の平均の月額賃金は、ここ数年は、高い伸び率をキープしているものの、1990年代後半からは、ほぼ横ばいの推移であると、近時に公開されているグラフ(独立行政法人労働政策研究・研修機構HPより)からは読み取れます。

 

そのような背景から、政府主導で、平均賃金を引き上げる施策を進めているものと言われてはいます。

加えて、我が国の労働生産性(GDP÷就業者数(もしくは就業者数×労働時間))は、国際的にみて「低い」と言われており、ここ数年、OECDに加盟する先進諸国の中で、最も低いランキングを推移しています。そのため、厚生労働省が主導する「働き方改革」を柱とする、労働生産性の向上を推進する施策が、積極的に図られています

つまり、政府が主導する平均賃金の引上げや、労働生産性の向上の狙いは、我が国と先進諸国と比較すると、労働者一人当たりが稼ぐ「お金」の額が低くくなっており、それが各国との賃金差にもつながっていて、国全体で、労働生産性を高めて、一人一人が稼ぐを「お金」の額を増やしていきましょうということだと言えるでしょう。

かつて、京セラ元会長の稲森和夫氏は、その著書の中でこう提唱していました。「売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える。入るを量って、出ずるを制する。利益を追うのではない。利益は後からついてくる(京セラ:経営12か条 第5条より)」。

これをこのまま、受け入れて、本当にそうだと思える人は、実は少ないのかもしれません。多くの人にとって、売上増加と経費のコントロールの両方をカバーすることは大変困難な作業だからです。それが、今日の我が国の労働生産性の低さに反映されていると言えるのではないでしょうか。

稲森和夫氏の提唱は、今日の日本社会の構造的な問題への警鐘であったとも捉えられます。

 

令和6年度の地域別最低賃金の引上げの背景を、私なりの考察を交えてコメントしましたが、皆さんはどう思われますか。過去最高の最低賃金の引上げという経営的には圧迫しかねない課題に対して、臆してしまうのか、これを好機として、稲盛氏が提唱する「入るを量って、出ずるを制する。」ことに真剣に向き合うのかで、私たちが築く未来は変わってくるのではないでしょうか。

なお、他の職員のブログでも紹介されていますが、最低賃金の引上げに合わせて、「業務改善助成金」を活用することも検討してみてはどうでしょうか。詳しい説明はここでは省きますが、「業務改善助成金」は、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を30円以上引上げ、生産性向上に資する設備投資を行った場合に、その設備投資にかかった費用の一部を助成する制度です。ご検討されるようでしたら、当法人に是非ご相談ください。